1)跡継ぎは魚嫌い
食うや食わずの戦争体験をした両親に育てられた1958年1月生まれです。
今ならば捨てるレベルの臭い魚が食卓に並び、筋金入りの魚嫌いになりました。
早世した兄が留学していたフランスに、自分も留学したいと親に頼み込み異国での一人暮らしが
始まったのが1980年でした。そこで一番驚いたのが学食や町の食堂でのレベルの高さでした。
もちろんワインも然りでスーパーで3~5フランのものが、今まで味わったことのない
天にも昇る酔い心地で、これがワインとの劇的な出会いでした。
昼間から飲んでる人たちを横目で見て、自分とは体の構造が違うのだろうと思っていましたが、
それもありますが、ワイン自体のアルコール度数も高くなく酒に弱い私でも飲めたのです。
思えば1980年初頭は添加物もフィルターもほとんどなく、
須らくナチュラルワインでこれが普段の生活に根付いたものだと感心しました。
それともう一つ、一人暮らしが半年を過ぎたころ、急に味噌汁が飲みたくなり
持参した即席みそ汁を立て続けに2杯飲み干しました。あまりの美味さで唸った自分が、
この半年間は全く乾物のだしの入ったものを食べていなかったことに気づきました。
インバウンドの方々が日本でラーメンを食べて感激するのと同じ感じですね。
この2つに気付いただけでも今思えば大収穫でした。
その後帰国し、食べること以外取り柄のない息子を心配した両親は、
東京の繁盛店に修行に出せば何とかなると考えて、
当時売上日本一の東信水産さんにお世話になりました。
1日の来客が3000人以上というトンデモない店で、
腹ペコになりながらも、社食は毎日魚。すぐに魚嫌いがバレて、
心配した先輩が食べさせてくれた刺身で「鮮度の良い魚は臭みがなく美味い」と開眼しま
した。
2)無事、後を継ぐが魚は腐る
帰仙し、親子二人三脚で頑張るも時はバブル全盛期。
休みなく働けどもこなせない程注文が殺到し、先を見越して仕入れた魚で冷蔵庫は溢れ、
シャレの利いた従業員が「魚のホテル」と呼ぶほど店内もハエで溢れていました。
この状態を全く気にしない社長(父)と毎晩喧嘩の末、やっと私が代表になり改善することになりま
した。
3)苦しんだ末の冷却調理
生魚はマグロのような大きいものは塊のままで1週間以上持ちますが、
アジ、イワシなど光物は翌日まで、他の白身は良くて3日が限度でした。
そんな時「液体凍結するとドリップが出なくて良い」と教わって
試してみたのがこの冷凍の始まりでした。
初めは3枚におろした魚を冷凍しましたが、刺身に切ったものは約1分で冷凍できて、
通常の30倍の速さで凍るので身が縮み「洗い」になり、また寄生虫アニサキスなどの
食中毒も防げるし、それに伴って今まで刺身では食べられなかった天然魚が安心して提供できるよう
になりました。これを冷却冷却調理と呼んでいます。
4)魚臭いは雑菌臭だった
ワインの勉強会で、「意識の高いワイナリーは、
工場内を空間除菌していて、床に落としたパンも食える」と聞きこれを導入すると、
作業場の臭いやハエは完全に消え、それと合わせて教わった魚を紫外線殺菌すると、
魚の臭いが消えて今まで嫌いだった魚の臭いは雑菌臭だったと分かりました。
そして臭いの消えた魚がワインに良く合うことも発見しました。
特に1980年代以前の伸びしろのあるワインとの相性は抜群で、
色で合わせるマリアージュで、赤ワインとまぐろ赤身のヅケ、うに塩辛と貴腐ワイン、
例外的に平目昆布〆と赤ワイン(ポン酢にバルサミコ30年を忍ばせる)など、
乾物のだしの入ったヅケのつゆや昆布かつお節の利いたポン酢は
最強でこれを超えるマリアージュはないと考えています。
魚の臭みを紫外線殺菌で取り除くことで「日本酒以上のマリアージュ体験ができる」と
常連さんからもご評価頂けるようになりました。
また卸先の飲食店さんから「店が魚臭くならない。身がしまっていい。5日経っても臭わない。」。
極めつけは釣りをされるお客様が「釣りたてより美味い」と絶賛されました。
4)冷凍刺身は自動販売機がいいか?
現在の場所に引っ越して約50年。
今まで卸売専門で小売りをしてこなかったので、
震災後から張り紙をしても近所の人から小売りをしていると認識されず、
「入りにくい店だし、夕方はいつも閉まっている」という声が多かったので
自動販売機の導入を決めました。
5)冷凍自動販売機で皆が驚く美味しさを届けたい
①酒蒸しタコ 熟成酒と塩だけで調理した柔らかいタコで、90歳の母も柔らかく食べられます。
②生甘えび 普通販売されている物より甘さ10倍です。何も添加していませんが油を塗ったような円やかさ。
③生しめさば お酢は柔らかく、主役の’さば’の味が感じられ、歯ごたえもコリっとします。
④生しめニシン お酢は熟成30年になるシャンパーニュヴィネガーで柔らかく〆ました。。
⑤まぐろハム まぐろの一番味の濃いところをハムにした、弊社のシグネチャー商品です。
6)地球の裏側でもOK!? 地方発送時のコスト削減
一般的な送り方は魚に氷をまぶし、大き目な箱に入れますが、
可食部分だけを製品にしているので、魚種によっては半分から1/3に重さが減り輸送コストも軽減
できるようになりました。
クリアスペース