1)跡継ぎは魚嫌い
食うや食わずの戦争体験をした両親に育てられたので、
今ならば捨てるレベルの’臭い’魚が食卓に並び’筋金入りの魚嫌い’になりました。
心配した両親は東京の繁盛店に修行に出せば何とかなると考え、
当時売上日本一の東信水産さんにお世話になりました。
1日の売り上げが300万円以上で来客も3000人以上というトンデモない店で、
腹ペコになりながらも、社食は毎日魚。すぐに魚嫌いがバレて、
心配した先輩が食べさせてくれた刺身で「鮮度の良い魚は臭くなく美味い」と開眼しま した。
2)無事、後を継ぐが魚は腐る
帰仙し、親子二人三脚で頑張るも時はバブル全盛期。
休みなく働けどもこなせない程注文が殺到し、先を見越して仕入れた魚で冷蔵庫は溢れ、
シャレの利いた従業員が’魚のホテル’と呼ぶほど店内もハエで溢れていました。
この状態を全く気にしない社長(父)と毎晩喧嘩の末、やっと私が代表になり改善することになりました。
3)苦しんだ末の冷凍、紫外線殺菌
生魚はマグロのような大きいものは塊のままで1週間以上持ちますが、
アジ、イワシなど光物は翌日まで、他の白身は良くて3日が限度でした。
そんな時「液体凍結するとドリップが出なくて良いよ」と仕入先に教わって
試してみたのがこの冷凍の始まりでした。
初めは3枚におろした魚を冷凍しましたが、刺身に切ってから冷凍すると、
通常の30倍の速さで凍るので身が縮み’洗い’になりました。
(加熱調理の反対で引熱調理?というより冷却調理かもしれません)
これは和食の調理方法と同じ’洗い’で、特に夏場にスズキ、コチ、関西ではアコウ(キジハタ)が有名です。
魚よりワイン好きな社長が参加したワインの勉強会で、「意識の高いワイナリーは、
工場内を空間除菌していて、床に落としたパンも食える」と聞きこれを導入すると、
作業場の臭いとハエは完全に消え、
それと魚を紫外線で殺菌すると、魚の臭いが消えて美味しくなり、
今まで嫌いだった魚の臭いは雑菌臭だと分かりました。
そして臭いの消えた魚(刺身、寿司)がワインに良く合うことも発見しました。
特に1980年代以前の伸びしろのある’ナチュラルワイン’との相性は抜群で、
色で合わせるのがマリアージュの基本なので、赤ワインとまぐろ赤身のヅケ、うに塩辛と貴腐ワイン、
例外ですが平目昆布〆と赤ワイン(ポン酢にバルサミコ30年を忍ばせる)など、
「日本酒とのマリアージュ以上の体験ができる」とワイン会の常連さんからもご評価頂けるようになりました。
また卸先の飲食店さんから「店が魚臭くならない。身がしまっていい。5日経っても臭わない。」。極めつけは釣りをされるお客様が「自分が釣った魚が一番だと思ったが、釣りたてより美味い」と絶賛され(褒めすぎ?)醤油をつけないで召し上がられるそうです。更に冷凍することで寄生虫アニサキスなどの食中毒も防げるようになり、それに伴って今まで刺身では食べられなかった天然魚(ホッケ、チゴたら、等)が安心して提供できるようになりました。
4)冷凍刺身は自動販売機がいいか?
現在の場所に引っ越して約50年。
今まで卸売専門で小売りをしてこなかったので、
震災後から張り紙をしても近所の人から小売りをしていると認識されず、
「入りにくい店だし、夕方はいつも閉まっている」という声が多かったので
自動販売機の導入を決めました。
5)冷凍自動販売機で皆が驚く美味しさを届けたい
①酒蒸しタコ 熟成酒と塩だけで調理した柔らかいタコで、90歳の母も柔らかく食べられます。
②生甘えび 普通販売されている物より甘さ10倍です。何も添加していませんが油を塗ったような円やかさ。
③生しめさば お酢は柔らかく、主役の’さば’の味が感じられ、歯ごたえもコリっとします。
④生しめニシン お酢は熟成30年になるシャンパーニュヴィネガーで柔らかく〆ました。。
⑤まぐろハム まぐろの一番味の濃いところをハムにした、弊社のシグネチャー商品です。
6)地球の裏側でもOK!? 地方発送時のコスト削減
一般的な送り方は魚に氷をまぶし、大き目な箱に入れますが、
可食部分だけを製品にしているので、魚種によっては半分から1/3に重さが減り輸送コストも軽減できるようになりました。
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